預託在庫とは|VMIと常備在庫の意味、部品商が整備工場で始める手順
2026年10月6日
預託在庫とは、在庫の持ち主(所有者)は仕入先のまま、品物だけを使う側の手元に置いておき、実際に使った分をあとから精算して補充する方式です。製造業や流通の世界ではVMI(ベンダー・マネージド・インベントリ=仕入先在庫管理方式)とも呼ばれます。自動車の補修部品にあてはめると、部品商が自社の部品を整備工場の棚に置き、整備士が使った分だけを請求し、減った分を補充する形になります。家庭の置き薬箱に似ているので、日本カーネットでは常備部品(置き薬箱モデル)と呼んでいます。この記事では、部品商の経営者と営業責任者の方に向けて、預託在庫の意味、部品商と整備工場それぞれの利点、始める前に決めておくこと、部品検索システムを使った回し方を順に説明します。
預託在庫とは(VMI・常備在庫との関係)
預託在庫は「預けて託す在庫」と書くとおり、持ち主が自分の在庫を相手の場所に預けておく仕組みです。部品の所有権は部品商にあり、整備工場は棚から取り出して作業に使った時点で、その部品を買ったことになります。棚に並んでいるあいだは部品商の資産なので、整備工場が先に代金を払う必要はありません。
VMIは、この在庫を誰が管理するかに注目した呼び方です。どの部品をいくつ置くか、いつ補充するかを、使う側でなく仕入先が決めて管理します。常備在庫や常備部品は、現場でよく使われる言い方で、「いつも棚に置いてある在庫」という意味合いです。言葉は違っても、所有者は仕入先、置き場所は需要地、使った分だけ精算と補充、という三つの骨組みは共通しています。
| 呼び方 | 主に使われる場面 | 言葉が注目している点 |
|---|---|---|
| 預託在庫 | 製造業、流通、卸売の取引 | 所有権は仕入先のまま、相手先に預けて置く |
| VMI(ベンダー・マネージド・インベントリ) | メーカーと部品供給元、卸と小売 | 在庫の量と補充を仕入先が管理する |
| 常備在庫・常備部品 | 自動車補修部品の現場 | 使う場所にいつも置いてある |
| 置き薬箱(置き薬モデル) | 家庭向けの配置薬 | 使った分だけ後から払い、減った分を補充する |
預託在庫・VMIを自動車補修部品にあてはめると
預託在庫(VMI)を自動車の補修部品で使うと、部品商が所有する部品を整備工場内の常備部品棚に置き、整備士が使った分だけを後から精算し、減った分を部品商が補充する形になります。部品の物理的な置き場所だけを、需要が生まれる整備工場へ前倒しする考え方です。整備工場は部品の到着を待たずに作業に入れ、部品商は注文のたびに走る都度配達を減らせます。日本カーネットはこの形を、家庭の置き薬箱になぞらえて常備部品(置き薬箱モデル)と呼び、部品検索システムと組み合わせて提案しています。
自動車部品商の常備部品(置き薬箱モデル)の仕組み
部品商の仕事は、数万点ある補修部品の中から、車両型式や型式類別に合う一点を探し、整備工場へ届けることです。ところが整備工場から「この部品を1点」と電話が入るたびに営業車を出していると、1回の配達で運ぶのは1点か2点、金額にして数千円ということも珍しくありません。配達には燃料費、人件費、車両の維持費がかかり、売上は立っても利益が残りにくくなります。営業担当者の一日が配達で埋まり、新しい整備工場を訪ねる時間も取れなくなります。
常備部品モデルでは、汎用性の高い部品をあらかじめ整備工場の棚に置いておきます。整備士は棚から部品を取ってすぐ作業に入り、部品商は補充のときだけ訪問します。配達を補充のタイミングにまとめるので、配達の回数がそのまま減ります。
常備部品の流れ
- 部品商と整備工場で、棚に置く部品と数(基準数)を決める
- 部品商が部品を納め、棚番を付けて整備工場内の常備部品棚に並べる
- 整備士が作業で使った部品を記録する
- 使った分を部品商が精算し、整備工場へ請求する
- 基準数を下回った分を、部品商が補充の訪問でまとめて納める
流れ自体は単純ですが、棚に部品を置くだけでは回りません。「この車にこの部品が合うのか」「棚のどこにあるのか」「あといくつ残っているのか」を整備士がその場で調べられないと、結局は部品商へ電話で確認することになり、都度注文の手間が残ります。この点は後の節で、部品検索システムでの回し方として説明します。
預託在庫で部品商と整備工場が得られる利点
常備部品モデルの考え方の中心は、配達を減らして浮いたコストを部品の価格に回す、という一点です。どちらかが値引きを飲むのでなく、ムダな配達を減らした分を両者で分け合います。従来の都度注文と比べると、次のような違いがあります。
| 比較項目 | 従来:都度注文・都度配達 | 常備部品(預託在庫)モデル |
|---|---|---|
| 部品の置き場所 | 部品商の倉庫 | 整備工場内の常備部品棚 |
| 配達の頻度 | 注文が入るたびに走る | 補充のタイミングにまとめる |
| 部品商の配送コスト | 受注件数に比例して増える | 配達回数の削減分だけ下がる |
| 整備工場の仕入価格 | 配送コストを含んだ価格 | 削減分を還元した価格にできる |
| 整備工場の待機時間 | 部品到着まで作業が止まる | 棚から取ってすぐ着手できる |
| 売上の見え方 | 受注の波がそのまま売上の波になる | 基準在庫の補充で平準化しやすい |
| 取引の固定化 | 都度相見積りされやすい | 棚を預けた部品商が第一選択になる |
部品商にとっての利点
一つ目は配送コストです。配達の回数が減れば、燃料費、人件費、車両費が下がります。二つ目は時間です。営業担当者は補充のときだけ回ればよくなり、空いた時間を新規の開拓や既存客への提案に使えます。三つ目は取引の続きやすさです。整備工場の棚に自社の部品が置かれていれば、その部品商から買うのが当たり前になり、売上も基準在庫の補充という形で平準化しやすくなります。
整備工場にとっての利点
整備工場の側では、部品の到着を待つ時間がなくなります。リフトに車を載せたまま部品待ちで止まることが減り、作業の回転が上がります。配送コストの削減分が納入価格に反映されれば、同じ部品をより安く仕入れられます。棚に並んでいるあいだの部品は部品商の資産なので、整備工場が自分で在庫を買い込んで抱える必要もありません。
利点の大きさは、取引先の整備工場で動く部品の量と種類によって変わります。車検や一般整備で消耗部品が継続的に動く工場ほど、都度配達を減らす効果が出やすくなります。配達の回数がもともと少ない取引先では、棚を置く手間のほうが上回ることもあるので、取引先ごとに見極めてください。
常備在庫を始めるときに決めること(基準数・棚番・精算周期・棚卸)
預託在庫は、部品商の資産を相手の場所に置く取引です。始めてから「言った、言わない」にならないよう、最初に次の項目を整備工場と決めて、書面に残しておくと安心です。
| 決めること | 中身 | 決め方の目安 |
|---|---|---|
| 置く部品と基準数 | どの部品を何個置くか。基準数を下回ったら補充する | 取引先が実際に使っている部品の履歴から、よく動くものを選ぶ |
| 棚番 | 棚のどこに何があるかを示す番号 | 整備士が迷わない並べ方にし、番号と部品を1対1で結び付ける |
| 使用の記録方法 | 誰が、いつ、何を使ったかを残す方法 | 紙の記入でなく、使った場で記録できる方法にそろえる |
| 精算の周期 | 使った分をいつ締めて請求するか | 取引先の支払い条件と、補充訪問の間隔に合わせる |
| 補充の周期 | どのくらいの間隔で補充に回るか | 部品の動きと配送ルートを見て決める |
| 棚卸 | 棚の実在庫と記録が合っているかを確かめる時期と方法 | 補充の訪問に合わせて数え、差があればその場で確認する |
| 破損・紛失時の扱い | 棚の部品が傷んだり数が合わなかったりしたとき | どちらが負担するかを始める前に取り決めておく |
基準数は「よく動く汎用品」から絞り込む
最初から多くの品目を置くと、動かない部品が棚を占め、部品商の在庫が寝てしまいます。まずはその整備工場で継続的に使われている汎用性の高い部品に絞り、実際の使用数を見ながら基準数を増減させるほうが無理がありません。車種ごとの特注品のように、棚に置いても動きにくい部品は、常備の対象から外して都度の注文で受けます。
棚番と記録をそろえる
棚番は、部品商の管理と整備工場の現場をつなぐ共通の言葉です。棚番が決まっていないと、整備士は棚の前で部品を探し回り、部品商は補充のたびに数え直すことになります。棚番、品番、基準数、現在の在庫数をひとつの画面で見られるようにしておくと、補充も棚卸も短い時間で終わります。
預託在庫を部品検索システムで回す方法
日本カーネットのカーネット部品検索システムは、整備工場に置いた常備部品の適合確認と棚番の検索から、発注、受注の管理までを一つにまとめた、部品商様向けのシステムです。預託在庫の運用で手間がかかる場面ごとに、使う機能を整理すると次のとおりです。
| 運用の場面 | 整備工場・部品商が困ること | 部品検索システムの機能 |
|---|---|---|
| 適合の確認 | この車に棚の部品が合うか分からない | 型式指定番号と類別区分番号、または車両型式で検索し、該当車両の部品と棚番を表示 |
| 棚の場所 | 棚のどこにあるか探し回る | 部品一覧に品名、品番、棚番、在庫数、基準数、利用数を表示 |
| 使用の記録 | 誰が何を使ったか分からなくなる | 部品一覧から「使用リストへ」で処理 |
| 補充 | 不足分の確認と発注に時間がかかる | 基準在庫を設定し、棚卸のタイミングで不足分を一括注文 |
| 棚に無い部品 | 結局は電話で注文することになる | 取扱部品は「注文リストへ」、リストに無い部品は「問合せ項目の作成」から依頼 |
| 納品状況 | 「いつ届くのか」の確認電話が増える | 受注ステータス(納品完了、納品準備中、取寄せ中)をスマートフォンで確認 |
整備工場の画面:常備部品検索
整備工場の画面では、型式指定番号と類別区分番号、または車両型式で検索すると、車名、型式指定文字、型式類別番号、メーカーNo.、ネームプレートなどの車両情報が表示されます。検索結果が複数あれば車両一覧から対象の車を選び、その車に付く部品と棚番を確認します。部品一覧の「在庫あり」は工場の常備部品棚にある部品、「在庫なし」は棚には無いものの部品商の取扱対象である部品です。後者はそのまま「注文リストへ」から注文できます。
純正のマフラーやバンパーのような車種ごとの特注品は、常備部品のリストに入っていません。こうした部品は、画面下部の「問合せ項目の作成」に部品名と数量を入力して依頼します。棚に置く汎用品と、都度取り寄せる特注品を、同じ画面で扱い分けられる点が、預託在庫の運用と相性のよいところです。
部品商の画面:管理と権限
部品商側のホーム画面では、ライセンスキーの割り当て率、整備工場の一覧、問合せ件数の推移、ご注文件数の推移を1画面で把握できます。注文内容の画面には、注文日時、整備工場名、住所、担当者名、電話番号の基本情報と、部品No.、品名、メーカー、品番、希望価格、仕切り価格、注文数が一覧で並び、状態は「未出庫」「準備中」「入庫完了」「キャンセル」で絞り込めます。
ブロックや支店ごと、営業担当ごとの権限管理にも対応しています。ブロック長や支店長は担当ブロックの整備工場の情報を、各営業担当は自分の担当する整備工場だけを見るように設定できます。預託先の整備工場が増えても、担当ごとに補充と精算の状況を追えます。
部品商が今やること
預託在庫は、取引先の数と、置いた部品が実際に動くかどうかで効果が決まります。いきなり全取引先に広げるより、次の順で小さく始めて形を固めるほうが失敗が少なくなります。
- 配達の回数が多い取引先を洗い出し、どの整備工場で都度配達のコストが重いかを確かめる
- その整備工場で継続的に使われている汎用部品を、取引の履歴から選ぶ
- 置く部品、基準数、棚番、精算と補充の周期、棚卸、破損や紛失のときの扱いを取り決める
- 整備士が適合確認と使用の記録をその場でできるよう、部品検索システムの画面を一緒に操作して覚えてもらう
- 数か月ごとに使用数を見直し、動かない部品は外し、よく動く部品の基準数を上げる
常備部品モデル全体の考え方はトップページの常備部品(預託在庫)モデルの解説にまとめています。預託在庫で配達を減らして空いた営業の時間を、新しい取引先づくりに回す方法は部品商の新規開拓の進め方で、部品商を取り巻く環境と打ち手の全体像は部品商の生き残り策で扱っています。電話やFAXでの受注をどう置き換えるかは部品商の受発注のデジタル化、棚に置く部品の種類の考え方は純正部品・優良部品・リビルド部品の違いをご覧ください。導入のご相談はお問い合わせフォームから受け付けています。
よくある質問
- 預託在庫とは何ですか?
- 在庫の所有者は仕入先のまま、品物を使う側の場所に置いておき、使った分をあとから精算して補充する方式です。自動車の補修部品では、部品商が所有する部品を整備工場の棚に置き、整備士が使った分だけを請求し、減った分を補充する形になります。
- VMIと預託在庫は同じものですか?
- 考え方は同じです。預託在庫は所有権が仕入先にあることに注目した呼び方で、VMI(ベンダー・マネージド・インベントリ)は在庫の量と補充を仕入先が管理することに注目した呼び方です。自動車部品の現場では、家庭の置き薬箱になぞらえて常備部品とも呼ばれます。
- 常備部品にすると、なぜ整備工場の仕入価格を下げられるのですか?
- 部品価格には、その部品を届けるための配送コストが実質的に含まれています。都度配達を補充の訪問に集約すれば、部品商の燃料費、人件費、車両維持費が下がり、その削減分を納入価格に反映できます。部品商の利益を削らずに整備工場の仕入価格を下げる考え方です。
- 棚に置いていない部品はどうやって注文しますか?
- 部品検索システムでは、部品商の取扱部品は部品一覧の「注文リストへ」から、リストに無い車種ごとの特注品は「問合せ項目の作成」に部品名と数量を入力して依頼できます。棚の部品と取り寄せの部品を同じ画面で扱えます。
- 預託在庫を始める前に整備工場と決めておくことは何ですか?
- 置く部品と基準数、棚番、使用の記録方法、精算と補充の周期、棚卸の時期と方法、破損や紛失のときの扱いです。始めてから食い違わないよう、書面に残しておくと安心です。
出典・参考資料
- カーネット部品検索システム(日本カーネット株式会社)
https://ps.j-carnet.co.jp/index.php/top/parts_dealer_system/ - 自動車部品商向けサービス 常備部品・部品検索システム・新規開拓(日本カーネット株式会社)
https://ps.j-carnet.co.jp/
記載内容は2026年10月6日時点で公表資料を確認したものです。統計は各機関の最新公表値で、今後更新されることがあります。
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