衝突被害軽減ブレーキ義務化の時期と対象車|部品商の売れる部品はどう変わるか
2026年10月6日
新車に衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)を付けることが義務になり、2026年10月の時点では国産車も輸入車も、新型車と継続生産車の両方に義務付けが及んでいます。残っているのは軽トラックの継続生産車で、2027年9月から適用されます。前の車や歩行者を検知して自動でブレーキをかける装置が当たり前になると、追突やこすり事故で出ていた外装部品は少しずつ出にくくなると考えられます。その一方で、カメラやレーダーといった部品と、取り付けた後の調整作業が新しく出てきます。この記事では、国土交通省の資料をもとに義務化の時期と対象車、新車の装着率を確認し、部品商として何が減り、何が増えるのかを整理します。
衝突被害軽減ブレーキ義務化のスケジュール(国産車・輸入車)
国土交通省は令和2年(2020年)1月31日、乗用車などの衝突被害軽減ブレーキについて国際基準(国連協定規則第152号)を取り入れ、新車を対象に装着を義務付けると発表しました。同じ日に公布・施行され、適用の時期は車の区分ごとに分かれています。
| 区分 | 国産車 | 輸入車 |
|---|---|---|
| 新型車 | 2021年11月(令和3年11月) | 2024年7月(令和6年7月) |
| 継続生産車 | 2025年12月(令和7年12月) | 2026年7月(令和8年7月) |
| 軽トラックの継続生産車 | 2027年9月(令和9年9月) | 表の注記で継続生産車について示されている |
新型車は、新しく型式の指定を受けて発売される車のことです。継続生産車は、すでに型式を受けていて生産が続いている車を指します。国産の継続生産車は2025年12月から、輸入車の継続生産車は2026年7月から義務の対象になりました。軽トラックについては、資料の表の例外として継続生産車の時期だけが2027年9月と書かれています。軽トラックの新型車に別の時期は示されていません。
衝突被害軽減ブレーキ義務化の時期(国土交通省)
衝突被害軽減ブレーキの装着義務は、国産の新型車が2021年11月、輸入の新型車が2024年7月、国産の継続生産車が2025年12月、輸入の継続生産車が2026年7月から適用されています。軽トラックの継続生産車は2027年9月からです。対象は乗車定員10人未満の乗用車と、車両総重量3.5トン以下の貨物車で、要件は国連協定規則第152号に沿っています。義務付けの対象は新車で、すでに使われている車に後から付けることを求めるものとは発表されていません。
対象車種と試験の要件
義務の対象は、乗車定員10人未満の乗用車と、車両総重量3.5トン以下の貨物車です。二輪車、三輪車、カタピラやそりの付いた軽自動車、被牽引自動車は除かれています。国交省の本文資料には「協定規則第152号に規定された要件に適合した乗用車等の衝突被害軽減制動制御装置を備えなければならない」と書かれています。
| 試験の条件 | 乗用車など | 軽トラック |
|---|---|---|
| 止まっている車両に対して | 40km/hで衝突しないこと | 30km/hで衝突しないこと |
| 走っている車両に対して | 60km/hで衝突しないこと | 50km/hで衝突しないこと |
| 歩行者に対して | 30km/hで衝突しないこと | 20km/hで衝突しないこと |
表は国交省の資料に示された主な要件です。この速度の範囲であれば、前の車や歩行者にぶつからずに止まれることが求められています。市街地の低い速度でのもらい事故や追突は、この装置が最も効きやすい場面だといえます。
衝突被害軽減ブレーキの装着率(ASV技術普及台数調査)
義務化の前から、メーカーは新車への装着を進めていました。国土交通省の「ASV技術普及台数調査」は、各年1月から12月に国内向けに生産された車について、装置ごとの装着台数と総生産台数を載せています。この台数から、乗用車の衝突被害軽減ブレーキ(対車両)の装着率を計算すると次のとおりです。
| 生産年 | 普通・小型乗用車 | 軽乗用車 |
|---|---|---|
| 2021年 | 98.2%(2,053,925台/2,092,162台) | 95.7%(1,214,283台/1,269,101台) |
| 2024年 | 99.9%(2,243,142台/2,244,435台) | 99.4%(1,193,715台/1,200,869台) |
装着率は、調査表の装着台数を総生産台数で割って当サイトが計算した値です。国内向けの新車の生産台数をもとにしたもので、いま走っている車全体(保有車)の装着率ではありません。また、令和3年(2021年)調査で調査方法が変わっているため、令和2年以前の数字とは並べられません。
2024年に国内向けに生産された乗用車は、普通・小型も軽も、ほぼ全数に衝突被害軽減ブレーキが付いています。「保有されている車の何割に付いているか」を国が公表した数字は見当たりませんでした。サポカー(セーフティ・サポートカー)の公式サイトにも普及率の数値は載っていません。言えるのは「新車にはほぼ全数付いている」ところまでです。
いま走っている車がすべて装着車に入れ替わるまでには、長い時間がかかります。登録乗用車の平均車齢は9.44年(2025年3月末)で、平均使用年数は13.35年です。新車の装着率がほぼ全数になる前に作られた車には、装置の付いていないものも残っています。車齢の推移は車の平均使用年数と平均車齢の記事で確認できます。
衝突被害軽減ブレーキで部品商の売れる部品はどう変わるか
ここからは統計で確かめられた事実ではなく、部品の流れを考えるための整理です。数字は出せないため、方向だけを書きます。
| 方向 | 部品・作業の例 | 考え方 |
|---|---|---|
| 出にくくなる方向 | フロントバンパー、グリル、ヘッドランプ、ラジエーター、コンデンサーなど前まわりの外装部品 | 低い速度での追突や出会い頭の事故が減れば、前まわりの交換の回数は減っていくと考えられます |
| 新しく出てくる方向 | 前方カメラ、ミリ波レーダー、各種センサー、取付ブラケット、カバー類 | 前まわりを修理するときに、センサーやその取付部品の交換が加わる場合があります |
| 作業として増える方向 | カメラやレーダーの調整(エーミング)、修理後の機能確認 | 部品を付けただけで修理が終わらない車が増え、整備工場や鈑金工場の設備と手順が変わります |
事故の件数が減る流れは、警察庁の統計でも続いています。人身事故の件数は2004年の95万2,720件から2025年は28万7,023件まで減りました。くわしくは交通事故件数の推移と部品需要で取り上げています。ただし、警察庁の資料は事故が減った理由を衝突被害軽減ブレーキだけに結びつけてはいません。部品商の側でも、減った分をすべてこの装置のせいと考えるのは早計です。
増える側で目立つのが、前方カメラやレーダーを付けた車の修理です。前方カメラがフロントガラスの内側に付いている車では、ガラスを替えたあとにカメラの向きを合わせ直すエーミングが必要になる場合があります。バンパーの裏にレーダーがある車なら、バンパーの修理でも同じことが起きます。こうした電子制御装置の整備は、2020年4月の制度改正で特定整備の対象になりました。エーミングの手順や特定整備の認証については、姉妹サイトの特定整備・エーミングの解説サイトにまとめています。
部品商にとっての変化は、売る部品の品目だけにとどまりません。同じ車名でもグレードや年式によってカメラやレーダーの有無、取付位置が違うため、適合の確認が以前より細かくなります。注文を受けた部品が本当にその車に付くのかを、型式と類別で確かめる手間が増えていきます。
部品商が今やること(センサー付きの車への備え)
- 取引先の整備工場や鈑金工場が、エーミングや特定整備の認証にどう対応しているかを聞いておきます。外注に出しているのか、自社で設備を入れたのかによって、必要な部品と納期の感覚が変わります。
- 前まわりの修理で一緒に出やすい部品(ブラケット、カバー、センサー類)を、外装部品と組みで提案できるようにします。純正か優良かの選択肢は部品の種類の違いを参考に整理しておくと説明しやすくなります。
- 適合の確認を電話や口頭に頼らない形にします。常備部品と部品検索システムでは、型式指定番号と類別区分番号、または車両型式から車両を絞り込み、その車に付く部品と棚番を画面で確認できます。棚にない部品も同じ画面から問い合わせを作れます。
- 事故修理が減る分を、車検や一般整備の消耗部品で補えるように取引先を広げます。新規開拓の代行では、エリアと業態を指定して整備工場や板金塗装工場にFAXDMやメールマガジンで案内を届けられます。
部品商全体の打ち手は自動車部品商の生き残り策に整理しています。取引先の工場で事故修理の比率がどう変わっているか、気になる点があれば無料相談からお問い合わせください。
よくある質問
- 衝突被害軽減ブレーキの義務化はいつからですか?
- 国産車は新型車が2021年11月、継続生産車が2025年12月からです。輸入車は新型車が2024年7月、継続生産車が2026年7月から適用されています。軽トラックの継続生産車は2027年9月からです。
- 義務化の対象になる車種は何ですか?
- 乗車定員10人未満の乗用車と、車両総重量3.5トン以下の貨物車です。二輪車、三輪車、カタピラやそりの付いた軽自動車、被牽引自動車は対象外です。要件は国連協定規則第152号に沿っています。
- すでに乗っている車にも後付けが必要ですか?
- 国土交通省の発表は新車を対象とした義務付けです。すでに使われている車に後から装着することを求める内容は示されていません。
- 衝突被害軽減ブレーキの普及率はどのくらいですか?
- 国交省のASV技術普及台数調査から計算すると、2024年に国内向けに生産された乗用車の装着率(対車両)は普通・小型で99.9%、軽で99.4%です。これは新車生産ベースの値で、保有車全体の装着率を国が公表した数字は見当たりませんでした。
- 部品商にとってどんな仕事が増えますか?
- 前方カメラやレーダー、センサー類と取付部品の需要や、修理後のエーミングに伴う部品の手配が考えられます。グレードや年式で装備が違うため、型式と類別による適合確認の重みも増します。
出典・参考資料
- 国土交通省 報道発表「乗用車等の衝突被害軽減ブレーキに関する国際基準を導入し、新車を対象とした義務付けを行います。」(令和2年1月31日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha08_hh_003618.html - 同上 本文PDF
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001326168.pdf - 同上 概要PDF
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001326170.pdf - 国土交通省「ASV技術普及台数調査(令和7年公表、国産車)」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/01asv/data/r7hukyuudaisu_kokusan.pdf - 国土交通省 先進安全自動車(ASV)資料ページ
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/01asv/documents.html - セーフティ・サポートカー(サポカー)公式サイト
https://www.safety-support-car.go.jp/ - 自動車検査登録情報協会「わが国の自動車保有動向」(平均車齢・平均使用年数)
https://www.airia.or.jp/publish/statistics/trend.html
記載内容は2026年10月6日時点で公表資料を確認したものです。統計は各機関の最新公表値で、今後更新されることがあります。
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