部品商の生き残り策と将来|車が壊れない時代に自動車部品商が今後やること
2026年10月6日
自動車部品商の経営者や営業責任者の方から、「車がよくなって部品が売れなくなった」という声を聞くことが増えました。数字で見ても、人身事故の件数は2004年(平成16年)の95万2,720件から2025年(令和7年)には28万7,023件まで減り、2024年に国内向けに生産された普通・小型乗用車の99.9%に衝突被害軽減ブレーキ(対車両)が付いています。一方で、登録乗用車の平均車齢は9.44年と33年連続で延びており、今走っている車が長く使われ続けているのも事実です。この記事では、部品が売れにくくなった理由を国の統計で一つずつ確かめ、そのうえで部品商の生き残りに向けて今から打てる手を、取引先を固める、取引先を増やす、収益源を増やすの3つに分けて整理します。
部品商の将来が不安視される理由(車がよくなって部品が売れにくい)
部品商の売上を支えてきたのは、事故で壊れた外装部品、走行距離に応じて減っていく消耗品、年数がたって傷む機能部品の3つです。このうち事故と故障の二つが、車の性能向上で目に見えて減ってきました。ここでは警察庁、国土交通省、経済産業省、総務省・経済産業省の統計から、部品商の将来に関わる数字を拾います。
交通事故(人身事故)の件数は20年で約7割減
警察庁の交通事故統計によると、人身事故の件数は2004年(平成16年)の95万2,720件が過去最多です。その後は減り続け、2025年(令和7年)は28万7,023件でした。10年前の2015年(平成27年)と比べると約46%、ピークの2004年と比べると約70%少ない水準です。事故の詳しい推移と部品需要との関係は交通事故の減少と部品需要で整理しています。
| 年 | 交通事故件数(人身事故) | 死者数 | 負傷者数 |
|---|---|---|---|
| 2004年(平成16年・過去最多) | 952,720件 | 7,436人 | 1,183,617人 |
| 2005年(平成17年) | 934,346件 | 6,937人 | 1,157,113人 |
| 2015年(平成27年) | 536,899件 | 4,117人 | 666,023人 |
| 2025年(令和7年・最新) | 287,023件 | 2,547人 | 338,508人 |
警察庁の統計で数えているのは人の死傷を伴う人身事故だけで、物損事故の全国件数は昭和40年以前しか計上されていません。また、日本自動車整備振興会連合会(日整連)の調査では、整備業の「事故整備」売上は2024年度実績で1兆2,253億円と前年度より9.4%増えています。人身事故の件数だけを見て、鈑金・事故修理の部品需要も同じだけ減ったと考えるのは早計です。
衝突被害軽減ブレーキの義務化と新車への装着率
国土交通省は2020年(令和2年)1月に、乗用車と車両総重量3.5トン以下の貨物車に衝突被害軽減ブレーキの装備を義務付けました。国産車は新型車が2021年11月、継続生産車が2025年12月から、輸入車は新型車が2024年7月、継続生産車が2026年7月から対象です(軽トラックの継続生産車は2027年9月)。国交省のASV技術普及台数調査を見ると、2024年に国内向けに生産された普通・小型乗用車は224万4,435台のうち224万3,142台、軽乗用車は120万869台のうち119万3,715台に対車両の衝突被害軽減ブレーキが付いており、装着率はそれぞれ99.9%、99.4%と計算できます。
この数字は新車の生産台数に対する割合で、道を走っている車全体の装着率ではありません。保有車が入れ替わるにつれて、ぶつからない車の割合が少しずつ上がっていく、と読むのが正確です。義務化の時期と部品商への影響は衝突被害軽減ブレーキ義務化と部品商で詳しく説明しています。
電動車の比率と部品交換機会の減少
日本自動車販売協会連合会(自販連)の燃料別登録台数では、2025年1〜12月の登録乗用車のうちハイブリッド車が60.4%、電気自動車(EV)は1.6%でした。軽自動車は含まない数字です。単月では2026年9月にEVが5.7%まで上がっています。経済産業省の「自動車補修部品産業未来ビジョン」(2014年12月改訂)は、電気自動車について「車両を維持するための部品交換機会が減少すると見られている」と書き、回生ブレーキによってブレーキパッドの交換機会が下がること、整備がアッセンブリ交換に集約される可能性にも触れています。
自動車の部品点数がおよそ3万点から2万点に減るという話もよく聞きますが、これは経済産業省の委託調査報告書(2023年3月)に「といわれている」という伝聞の形で紹介されているもので、国が推計した数字ではありません。EVで減る整備と残る整備はEVが部品商に与える影響で、国交省の点検基準の検討資料をもとに整理しています。
自動車部品卸の事業所数は5年で約15%減
総務省・経済産業省の経済センサス‐活動調査で「自動車部分品・附属品卸売業(中古品を除く)」を見ると、法人の事業所数は2016年調査の9,479から2021年調査の8,083に減っています。率にすると約15%の減少です。2021年調査は個人経営の事業所を細分類に含めておらず、調査の方法も変わっているため、総務省は単純な比較に注意を求めています。それでも、同業者の数が減る方向にあることは読み取れます。詳しい数字は部品卸の事業所数の推移にまとめました。
それでも補修部品の需要が残る理由(平均車齢と保有台数の時間差)
事故が減り、新しい車が壊れにくくなっても、今日走っている車がすぐ入れ替わるわけではありません。自動車検査登録情報協会(自検協)の統計では、2025年3月末の登録乗用車(軽自動車を除く)の平均車齢は9.44年で、33年連続で高齢化しました。軽自動車検査協会の統計でも、軽乗用車の平均車齢は2025年12月末で9.80年と、10年前の7.97年から延びています。保有台数も2026年3月末で8,277万5,321台と、10年前の102.6%です。
| 項目 | 最新値 | 10年前 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 登録乗用車の平均車齢 | 9.44年(2025年3月末) | 8.29年(2015年3月末) | 自検協 |
| 登録乗用車の平均使用年数 | 13.35年(2025年3月末) | 12.38年(2015年3月末) | 自検協 |
| 軽乗用車の平均車齢 | 9.80年(2025年12月末) | 7.97年(2015年12月末) | 軽自動車検査協会 |
| 自動車保有台数(二輪含む) | 82,775,321台(2026年3月末) | 80,900,730台(2016年3月末) | 自検協 |
| 総整備売上高 | 6兆6,592億円(2024年度実績) | 5兆5,133億円(平成27年度調査) | 日整連 |
車が長く使われるほど、ゴム部品、ベアリング、冷却系、足回り、補機バッテリーといった年数で傷む部品の交換は続きます。日整連の令和7年度調査でも、総整備売上高は6兆6,592億円と4年連続で増えました。新車で起きている変化が保有車全体に行き渡るまでには、平均使用年数の分だけ時間差があります。平均車齢と部品需要の関係は平均車齢の伸びと部品需要で解説しています。
部品商の将来をどう見るか(時間差の考え方)
部品商の将来は、新車の変化と保有車の変化を分けて考えると見通しやすくなります。新車では衝突被害軽減ブレーキがほぼ全数に付き、登録乗用車の6割がハイブリッド車になりました(2025年)。一方、登録乗用車の平均使用年数は13.35年(2025年3月末)で、今日売られた新車が保有車の主流になるまでには10年以上かかります。そのあいだ、既存のエンジン車の補修部品は動き続けますが、事故と故障に頼る売上は少しずつ細ります。この時間差のうちに、取引先との関係を固め、取引先の数を増やし、部品以外の収益源を育てておくことが、部品商の生き残りにつながります。
部品商の生き残りの打ち手(取引先を固める・増やす・収益源を増やす)
日本カーネットは、整備システムを全国の整備工場に提供してきた立場から、部品商の方に3つの打ち手を提案しています。どれも、部品商がすでに持っている整備工場との関係を土台にしたものです。
| 打ち手 | やること | 効く課題 | 詳しい解説 |
|---|---|---|---|
| 取引先を固める | 整備工場に常備部品の棚を置き、部品検索システムで適合確認と発注をつなぐ | 都度配達のコスト、相見積り、売上の波 | 常備部品モデル |
| 取引先を増やす | 全国の整備工場等のリストにFAXDMやメールマガジンで接触する新規開拓の代行 | 廃業による取引先の減少、営業時間の不足 | 新規開拓の代行 |
| 収益源を増やす | 取引先の整備工場に整備システムを販売する代理店になる | 部品の販売量の減少 | 整備システムの代理店 |
常備部品と部品検索システムで取引先を固める
常備部品は、家庭の置き薬箱のように整備工場の中に部品商の部品棚をつくり、汎用性の高い部品をあらかじめ置いておく方式です。使った分を後から精算し、減った分を補充します。製造業では預託在庫やVMI(仕入先在庫管理方式)と呼ばれる形です。整備工場の棚に部品があれば、1点ごとに営業車を走らせる必要がなくなり、配達にかかる燃料費や人件費が下がります。その分を納入価格に反映できれば、整備工場にとっても仕入れ値と待ち時間が減ります。棚を預けた部品商が第一の仕入先になるため、相見積りで取引が揺れにくくなる効果もあります。仕組みの詳細は預託在庫・常備部品とはをご覧ください。
棚を置くだけでは、整備士が「この車にこの部品が合うのか」「棚のどこにあるのか」を調べられず、結局は電話の問い合わせに戻ってしまいます。カーネット部品検索システムは、型式指定番号と類別区分番号、または車両型式から、常備部品の適合と棚番、在庫数をその場で確認できます。基準在庫を設定して不足分を一括注文でき、棚に無い部品も同じ画面から問い合わせられます。受注の状況(納品完了・納品準備中・取寄せ中)はスマートフォンで確認できます。機能は部品検索システムの詳細にまとめています。
新規開拓の代行で取引先を増やす
取引先の整備工場が廃業や後継者不在で減っても、営業担当が配達に追われていると新しい工場を訪ねる時間が取れません。日本カーネットは、全国の整備工場、板金塗装工場、車両販売店のFAXリストとメールマガジン配信リストを自社で保有しており、エリアと業態を指定して部品商の方の営業アプローチを代行します。FAX原稿やメール原稿は専門のスタッフが用意し、御社がお持ちの見込みリストへのFAXDM送付にも対応しています。進め方は部品商の新規開拓と営業で具体的に説明しています。
整備システムの代理店で収益源を増やす
部品の販売量が細っていく中で、同じ整備工場に別の商材を届けられれば、1社あたりの取引額を保てます。日本カーネットの代理店になると、整備システム・整備ソフト DREAM POWER(自動車整備システム、車両販売システムほか)を取引先に販売できます。地域テリトリー制はなく、他社システムとの併売もでき、販売ノルマもありません。お客様が月払で契約を続けているあいだ継続報酬が入る仕組みで、導入後の操作の質問はカーネットのサポートセンターが受けます。部品商にとっての意味は部品商が整備システムの代理店になるで解説しています。
取引先(整備工場)と一緒に変わる小さな提案
3つの打ち手とは別に、毎日の配達や補充の場でできることもあります。たとえば、入庫した車のワイパーゴムの傷みに気づいたら交換の声がけを整備工場に勧める、雨の季節の前にガラスの油膜取りや撥水の作業を提案する、ヘッドライトの黄ばみ除去を車検のついでのメニューにしてもらう、といった提案です。どれも1回の金額は小さくても、整備工場の売上を一緒に増やす話なので、価格の話だけで終わらない関係をつくれます。経済産業省のビジョンも、今後も必要とされる商材としてタイヤや外装部品を挙げています。EVで点検項目から外れるとされているのはエンジン・オイルや点火装置、マフラーなどで、ブレーキ、タイヤ、足回り、冷却水、補機用バッテリは国交省の検討資料でもEVの点検項目に残る案です。
事業承継やM&Aも、部品商の今後を考えるときによく挙がる選択肢です。ただし会社ごとの事情で判断が大きく変わるため、この記事では扱いません。税理士や金融機関など専門家への相談をおすすめします。
部品商が今やること
売上が急に落ちていない今こそ、時間差を使って手を打てる時期です。次の順で進めると、社内の負担を抑えながら始められます。
- 取引先の整備工場を売上順に並べ、上位の工場から常備部品の棚を置けるか相談する
- 常備部品の候補を、過去1年に同じ工場で繰り返し出た部品から選ぶ
- 営業担当の1日のうち配達に使っている時間を記録し、浮かせられる時間を見積もる
- 配送圏内で取引の無い整備工場、板金塗装工場、車両販売店を洗い出し、新規開拓の対象を決める
- 整備システムの入れ替えを考えている取引先がないか、配達のついでに聞いておく
どこから手を付けるか迷う場合は、日本カーネットの無料相談をご利用ください。部品検索システム、新規開拓の代行、代理店制度のどれか一つだけのご相談でも受け付けています。業界全体の変化はトップページの解説でも整理しています。
よくある質問
- 自動車部品商に将来性はありますか?
- 登録乗用車の平均車齢は9.44年(2025年3月末)で33年連続で延び、保有台数も10年前の102.6%(2026年3月末)です。今走っている車の補修部品の需要はすぐには無くなりません。ただ、事故と故障に頼る売上は新車の変化に合わせて細っていくため、取引先の固定や新しい収益源の準備が要ります。
- 交通事故が減ると鈑金部品は売れなくなりますか?
- 人身事故は2004年の95万2,720件から2025年の28万7,023件に減りました。ただ、物損事故の全国件数は警察庁の統計に無く、日整連の調査では事故整備の売上は2024年度実績で前年度比9.4%増えています。人身事故の減少だけで鈑金部品の需要を判断するのは早いといえます。
- EVが増えると部品商の売上はどうなりますか?
- 経済産業省のビジョンは、EVでは部品交換機会が減ると見られると書いています。一方、2025年の登録乗用車に占めるEVは1.6%で、ハイブリッド車が60.4%です。ブレーキやタイヤ、足回りの部品はEVでも残るため、品目の見直しを少しずつ進めるのが現実的です。
- 常備部品を始めると配達コストはどれくらい下がりますか?
- 下がる額は、取引先の数、配達の頻度、棚に置く部品の種類で変わるため、一律の数字はお示ししていません。都度配達を補充時のまとめ配達に置き換えた分だけ、燃料費や人件費、車両費が減る仕組みです。
- 部品商が整備システムの代理店になるのに費用はかかりますか?
- 日本カーネットの代理店は、加盟金、保証金、研修費、ロイヤリティがいずれも0円で、在庫も持ちません。地域テリトリー制はなく、他社システムとの併売もできます。報酬の条件は面談でご説明しています。
出典・参考資料
- 警察庁「令和7年における交通事故の発生状況について」(令和8年2月26日)
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/bunseki/nenkan/080226R07nenkan.pdf - 警察庁交通局「令和7年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」表1-1〜1-3(e-Stat掲載)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&lid=000001477119 - 警察庁「交通事故統計における用語の解説」
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/yougo.html - 国土交通省 報道発表「乗用車等の衝突被害軽減ブレーキに関する国際基準を導入し、新車を対象とした義務付けを行います。」(令和2年1月31日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha08_hh_003618.html - 国土交通省「ASV技術普及台数調査(令和7年公表、国産車)」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/01asv/data/r7hukyuudaisu_kokusan.pdf - 自動車検査登録情報協会「平均車齢」「平均使用年数」(令和7年3月末)
https://www.airia.or.jp/publish/statistics/trend.html - 自動車検査登録情報協会「自動車保有台数の推移」
https://www.airia.or.jp/publish/statistics/hoyuudaisuusuii_2026.pdf - 軽自動車検査協会「軽自動車の平均車齢・平均使用年数」
https://www.keikenkyo.or.jp/information/statistics/average_data.html - 日本自動車整備振興会連合会「令和7年度 自動車特定整備業実態調査結果の概要について」(令和8年1月30日)
https://www.jaspa.or.jp/Portals/0/resources/jaspahp/member/data/pdf/R07jittaityousa.pdf - 日本自動車販売協会連合会「燃料別登録台数」
https://www.jada.or.jp/pages/342/ - 経済産業省「自動車補修部品産業未来ビジョン」(平成26年12月改訂、全日本自動車部品卸商協同組合サイト掲載)
https://www.zenbukyo.or.jp/file/miraivision.pdf - 経済産業省 委託調査報告書「令和4年度 電動化シフトを踏まえた地域自動車部品サプライヤーの技術力・開発力向上に向けた動向調査 報告書」
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2022FY/000264.pdf - 国土交通省「バッテリーEVに特化した点検基準の検討状況について」(検討資料)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001445474.pdf - 総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」産業別集計(卸売業,小売業)統計表ID 0004003240
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0004003240 - 総務省・経済産業省「平成28年経済センサス‐活動調査」産業別集計(卸売業,小売業)統計表ID 0003389426
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003389426
記載内容は2026年10月6日時点で公表資料を確認したものです。統計は各機関の最新公表値で、今後更新されることがあります。
このサービスは、政府統計総合窓口(e-Stat)のAPI機能を使用していますが、サービスの内容は国によって保証されたものではありません。
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